1st Digital EP「?」
全曲解説

「The Dawn」から「水槽」まで
収録曲すべてを解説

M1. The Dawn

BIGYUKIとNIKO NIKO TAN TANによるコラボレーションが実現。BIGYUKIとは、ア・トライブ・コールド・クエスト、J・コール、ロバート・グラスパー、カマシ・ワシントンなどとも共演する、ジャズ~ソウル~ヒップホップの交差が進化し続けるNYのミュージックシーンにおける重要人物。もともとエンジニアが彼と友人だった上に、偶然同じスタジオにいたことがきっかけで、曲を聴いてもらったところ演奏のオーダーを快諾してくれた。BIGYUKIのシグニチャーサウンドと呼べるシンセベースとAnabebeの覚醒したドラムが強靭なグルーヴを生んでいる。楽曲のテーマは“幕開け“”夜明け”。コロナ禍が明ける日も、自分にとっての新たな始まりの日も、突然やってくるものではない。幕開けとは実は、じわじわと訪れるものだ。そんなことをリアルに表現する、NIKO NIKO TAN TANなりの

幕開けをエッジーに描いた曲。


M2. 胸騒ぎ feat. Chi- from カメレオン・ライム・ウーピーパイ

数年前に対バンで知り合ったChi-(カメレオン・ライム・ウーピーパイ)をゲストボーカルに迎えた念願のコラボレーション。Chi-とOchanの声の成分には近いものがあり、NIKO NIKO TAN TANのサウンドに美しく溶け込んでいる。刺激的な音と言葉が入り混じったこの楽曲は、スマホ、PC、テレビなどからノイズのように情報が入ってきて心が持っていかれる不安定な状態を表現。身動きが取りづらくなって鬱屈とした感情に陥ったとき、「こんな世界だからどうでもいいでしょ」と現実逃避したくなるけれど、実際は突然すべてを投げ出せるわけがない。そんな脳内の“じくじくした感じ”をサウンドでもリリックでも表現することに成功している。今の時代だからこそ生まれた一曲だともいえるだろう。


M3. WONDER

2021年9月からの本格始動後、3か月連続リリースの中で一発目に発表した楽曲。J-WAVE「SONAR TRAX」に選出され、「J-WAVE TOKIO HOT 100」にも2週連続ランクイン。洗練されたオルタナティブ/ミクスチャーの骨格から放たれるジャンルを超えたグルーヴは、ライブでも特に盛り上がる。そもそもは、情報過多な上に制限がある、この刺激を失いがちな世の中で「WONDER=欲望、高揚感」を音楽で取り戻すべく作り始めた曲。どんな世の中であっても好奇心や快楽を呼び起こしていたいというNIKO NIKO TANTANの想いから生まれたこの曲は、不感症になりかけている人がいるならば、その人の腕を引っ張り上げることができるだろう。Sister Sledgeなど70〜80年代のディスコやDaft Punkなどのダンスミュージックからインスピレーションを受けた要素を基盤にしながら、Anabebeのあえて“ズレ”を意識した遊び心あるドラミングや、哀愁を感じさせるコードも用いることによって、NIKO NIKO TANならではのミクスチャー・サウンドを誕生させている。EPには、シングルとしてリリースしたものからミックスも変えたリマスター版を収録。


M4. 多分、あれはFly

以前からライブで披露していた人気曲をついに音源化。オリエンタルなダンスミュージックをNIKO NIKO TAN TANらしく生み出した。日本人にとって物心つくまえから耳に入っている音が、ふんだんに散りばめられている。この曲に限らずNIKO NIKO TAN TANは、聴いたときに懐かしさを呼び起こす要素をどこかに忍ばせていることが多い。そして、実はこの楽曲には裏テーマがあるが、それは内緒。クールに見えるけれど、実はふざけているという表と裏のある作品作りはNIKO NIKO TAN TANが得意とするものであり彼らの美学でもある。日常のループ感を表しているような歌詞や、タイトルにもなっているサビのフレーズにおいては、NIKO NIKO TAN TANらしい言葉遊び的センスが抜群。


M5. ヨルガオ

2021年9月からの3か月連続リリースで、2曲目に発表した楽曲。「WONDER」と同じく、シングルとしてリリースしたものからミックスも変えたリマスター版をEPに収録。テーマは、ヨルガオの花言葉である“妖艶“”夜の思い出”。摩訶不思議な夢の中で鳴っている子守唄を、様々な音色や揺れるリズムで表現。サビで攻め立てるバスドラと、これまでの楽曲ではあまり取り入れてこなかった歪んだギターを最後に狂気的に鳴らしていることも特徴的。この楽曲でも、物心がつく前から日本人の身体に染みついているオリエンタルな音と現代的なサウンドを、地続きにつなげるトラックメイキングに成功している。


M6. 夜を彷徨う、僕の衝動

2021年9月からの3か月連続リリースを締めくくった楽曲。Ochanは夜に散歩をすることが毎日のルーティンで、散歩しながら自分と向き合う時間を「夜を彷徨う、僕の衝動」と表現。過去・現在・未来について自分の脳内を潜り始めたとき、思考の扉を一つひとつ開いていく感覚になるが、そこにゴールや出口はない。そんな人間の思考の渦を音楽と映像で表現している。ちょうど人々が街に戻り始めたが各々の心の中には彷徨いや戸惑いが残っていたシビアな時期に書いた曲であり、当時の街で暮らす人たちの心境が曲に刻まれているといえる。


M7. 水槽

NIKO NIKO TAN TANの曲の中でも特に冷え切った心身を温めてくれる一曲。2022年2月23日にシングルとして配信リリース。「Na…」というパートはOchanがしばらく寝かせていたお気に入りのフレーズであり、自分が聴いて感動する曲を自然体の状態で書こうという姿勢で作り始めたこの曲に、ここぞとばかりに入れ込んだ。歌詞のストーリーの主人公は、水槽の中にいるクラゲを覗き込んでいる人。本来海で泳いでいるはずのクラゲが水槽というテリトリーで暮らしているが、難なく餌を食べることはできて、誰かから愛をもらいながら、もしくはときにほったらかされながら、生涯を終える。そんなクラゲと、毎日社会で働きながら生きる自分を重ねたとき、あなたなら何を想うだろうか。


テキスト:矢島由佳子